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生活、医療までを変える力を秘めたスポーツに期待すること – VICTORY

VICTORY

2017年(平成29)年4月、スポーツ庁が日本スポーツの5か年計画となる「第2期スポーツ基本計画」を発表。国民がスポーツで「人生が変わる!/社会を変える!/世界とつながる!/未来を創る!」という4つの指針とともに各数値目標を設定した。なかでも注目したのは、目標のなかに示された運動プログラムによる「健康寿命の延伸と国民医療費の抑制」。スポーツと医療、そして膨らみ続ける医療費負担をスポーツで減らすことができるのだろうか。官民の取り組みと打開策のヒントを模索してみた。

文=松田政紀(アート・サプライ代表)

スポーツと日本人の関係は良好か

「何かスポーツをしていますか?」と「運動していますか?」との問い。あなたはどちらが回答しやすいだろうか。

スポーツならばランニングやヨガ、テニスに野球と種目を思い浮かべ、少しだけならやっている。いや、実はやりたいと思っていたとなる人は多い。かたや運動と聞くと少なからず抵抗を示す人もいる。昨今の体育や部活動への取り組みが話題になったことからわかるよう「体育の延長」と捉えている人は、関心度が低下している可能性も否めない。このことから多くの人が、「スポーツ」と「運動」を別物として捉えている側面が垣間見える。

「スポーツ」という言葉に対する関心度は、2020年「東京オリンピック」開催が決定してから競技はもちろん、関連施設の建築、インバウンド向けサービスなどビジネスをも巻き込み経済を活性化させていることは間違いない。さらにスポーツ庁長官の鈴木大地氏を筆頭に「スポーツで、楽しく健康で活力ある人生に。」というスローガンのもと、生活を豊かで文化的なものに変え「スポーツ立国」を実現しようという取り組みが進められている。スポーツは、文化であり、コミュニティを形成する上で重要なファクターとなる。かつ身体を健康に保つことで健全な社会が形成されるという考え方だ。

©Getty Images

日本のスポーツが目指すもの

昨年スポーツ庁が発表した「スポーツの実施状況等に関する世論調査(平成28年度)【http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1381922.htm】」を具体的にみていくと、「成人の週1回以上のスポーツ実施率」は「42.5%」という数値となっている。意外と高い数値という印象も受けるが、「第2期スポーツ基本計画」では、この数値を半数以上の65%に引き上げることを目標としている。

そもそも「スポーツ基本法」が制定されたのは、東京オリンピックが決定する2年前の2011年。翌2012年には「スポーツ基本計画」を発表し、スポーツによる国民生活や社会への改善へと取り組み始める。そして2017年に発表された「第2期スポーツ基本計画」では、今後5年間で変えるべき事象と施策、さらに具体的な目標数値が示された。健康・文化・社会の形成などに寄与することのほか、医療分野への取り組みが盛り込まれたことにも注目が集まっている。

厚生労働省の「平成29年度予算案の社会保障関係費の内訳」をみると医療費は11.8兆円、実に社会保証関係費の38.9%を占めている。もちろん高齢化も医療費増の要因となっているが、生活習慣病が占める割合も少なくない。年々膨らみつづけると予想される医療費を抑制するためにもスポーツを推進し、医療や福祉の分野との連携が急がれているのだ。

スポーツ基本計画に示された運動プログラムによる「健康寿命の延伸と国民医療費の抑制」がある。ここでは新潟県見附市における健康情報管理システムを活用したプログラムの実証実験の結果として、スポーツを推進することで年間1人10万円の医療費を抑制できる一例が示されている。実現に必要なこととして、スポーツの習慣化による生活習慣病の予防・改善、介護予防などをあげている。

©Getty Images

スポーツをもっと楽しむためには

「健康的で文化的な生活を送るために、明日からスポーツしなさい」。それだけでスポーツに取り組める人は、自力で始めているだろう。東京都はじめ各自治体は、公共のスポーツ施設を新設し、コミュニティの場とするなどの取り組みを活性化させている。場所ができれば今より身近に感じることはできる。

しかし、スポーツの楽しさは、どこまで伝わるだろうか。「どうしたら楽しくスポーツを楽しむことができるか」という問題に民間企業が取り組み、事業化かつ社会貢献へとつなげている注目すべきサービスがある。今年スタートしたものなど、事例をいくつか紹介したい。

1つめはサッカーの香川真司氏、水泳の北島康介氏、NPO法人TABLE FOR TWO Internationalとともに健康支援プロジェクト「Health for Tomorrow」を発足させたデジタルヘルスベンチャー「FiNC【https://finc.com/】」。スポーツによって開発途上国の飢餓や栄養失調の子どもたちを健康にするプロジェクトの第1弾として2017年7月から「FiNC WALK」がスタートする。専用アプリで歩数をカウントし、それに応じたポイントを付与。参加者全員の累計ポイントから10%がアフリカなどに寄付されるというもの。誰でも参加できる上、歩くだけで社会貢献できるとなればスポーツへの取り組み方の意識改革も起こるかもしれない。

2つめは、最近話題のキーワード「ヘルスツーリズム」とも通じるサービスを提供する「ラントリップ【http://corp.runtrip.jp/】」。ランナーたちが走ったルート情報を共有することで地域の魅力を発信または再発見し、走った距離はランナーのモチベーションへと還元する。新しい道を走ってみたいけど大丈夫かなと思う人たちに向け、道の雰囲気や周辺施設、走った感想までを共有できるサービスだ。そのほかイベントやランニング情報、ストアまでとランニングをパッケージ化して提供する。

3つめは、スポーツしたいけど場所がみつからない、みつけられない人たちへ向けた施設検索サービス「EPARKスポーツ【https://sports.epark.jp/】」。2017年6月にスタートしたばかりで、母体は店舗や病院などの検索や予約サービスを提供する「EPARK」。「Doスポーツ(カラダを動かして健康に)を促進する」をテーマにお客様ファーストを活かし、スポーツ施設検索に特化したサービスを提供している。スポーツはウェアや道具の準備も必要だが、スポーツする場所も大切。エリア、ジャンル検索はもちろん、開催されている講座(レッスン)が検索できることで初心者のハードルが下がっている。

スポーツは自分の身体のためだけにあらず。各サービスが、スポーツ庁の基本計画を後押しし、ひいては日本のスポーツ事情を変えていく力を持つかもしれない。それにより官民連携によるシナジー効果が出てくれば、スポーツへの意識も変わり社会貢献にもなる。スポーツとの付き合い方が変わることで、本当に医療費削減できるムーブメントとなることに期待したい。




 松田政紀

著者プロフィール 松田政紀

編集プロダクション(株)アート・サプライ代表取締役。長野生まれの群馬育ち、海より絶対山派で、書籍・MOOK・Webなどの企画・編集・執筆まで行なう。PC・IT系を軸にスポーツ・格闘技・旅行・心理学・医療などさまざまな分野のコンテンツを手がける。中学で始めたテニス歴は、軟式から硬式へと乗り換えかれこれ30数年に至る。

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