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リラックマから『北斗の拳』へ!? イマジニアがアプリ「マンガほっと」を手がけたわけ – Yahoo!ニュース 個人

2013年の講談社とexciteによる「Dモーニング」を皮切りに始まった日本のマンガアプリだが、今ではLINEマンガをはじめ、マンガアプリなくしてマンガビジネスは考えられないものになっている。

そんななか、リラックマ(サンエックス)やハローキティ(サンリオ)などのグッズやゲームを手がけるイマジニアが、イメージ的には真逆に見える『北斗の拳』をアイコンに使ったマンガアプリ「マンガほっと」の開発・運営を手がけた(2017年6月1日にローンチ)。

パートナーに選んだのは、『北斗の拳』の担当編集者であり、「週刊少年ジャンプ」編集長を経て堀江信彦氏が設立したマンガ出版社のコアミックス

リリース記念に『北斗の拳』や『エンジェル・ハート』『よろしくメカドック』の全話開放を行うなどしているが、マンガアプリとしてはかなり後発の部類に入る。

お互いどんな思惑と勝算があって参入したのか?

果たして「リラックマのマンガ化」はありうるのか???

■IPがほしい会社と、ITがほしい会社が必然的に手を組んだ

――イマジニアさんといえばゲーム『メダロット』シリーズや、リラックマのLINEスタンプなどを手がけていることで知られていますが、そもそもなぜコアミックスさんと「マンガほっと」をやることになったんでしょうか?

宇野智之(イマジニア株式会社モバイルメディア事業本部スマホビジネス事業部事業部長) 僕はまさに入社してすぐ『メダロット』に関わり、リラックマも担当させていただき、そのあとゲームや遊戯機関係のメディア、情報サイトなどをやってきました。そのなかで2015年ころに、いっしょにやっている現場のメンバーから「マンガ、やりたいよね」という声が出てきたんです。

マンガはひとつの雑誌、ひとつの会社さんのなかにたくさんのIPが詰まっていて、しかも次々に新作が出てきて、ファンとコアに結びついている。そこに非常に可能性を感じました。

当初は弊社単独でアプリをやろうと考え、マンガアプリがどういうビジネスモデルで成り立っているのかを調べはじめまして。マンガを電子取次から何千冊かお借りして、ユーザーには無料で読んでもらって広告で売上を作っている方々ですとか、いろいろな会社さんにお話を聞いていったんです。

そのなかで、「マンガのアプリをただやりたいわけじゃない。自分たちで『これ、おもしろいよね!』と思えるマンガを提供する側にいきたい」という思いが出てきまして。

とくにいいなと感じたのは2014年にアプリがリリースされた、小学館のマンガワンさんなんですね。ユーザーの呼び水に往年の名作を使いつつ、新作にリーチさせて、アプリ初出のコンテンツがものすごくファンを作り、コミックスもグッズも売れている。「これがやりたいやつだ」と。

イマジニア宇野氏。リラックマと『北斗の拳』が並ぶ会議室にて。
イマジニア宇野氏。リラックマと『北斗の拳』が並ぶ会議室にて。

――一口にマンガアプリと言っても、LINEマンガさんやマンガBANG!さんのようにいろいろな出版社の既刊の電子コミックスを販売するのが主である「電子ストア(電子書店)系」と、小学館マンガワンさんやNHN comicoさんのcomicoのように、アプリ初出の自社オリジナル作品を提供するのが主目的の「新作連載系」がありますが(両方の機能があるところも多いですが)、後者に近いかたちということですね。

宇野 それで「オリジナルのマンガを配信しよう!」と考えたんですが……考えれば考えるほど、「マンガづくりは素人ではできない。単発の作品一作だけならまだしても、複数の作品を連載して回していくことがとにかく難しい」ということを痛感しまして。そんなときに、共通の知り合い経由でコアミックス花田さんと知り合ったんです。

花田健(コアミックス電子戦略部次長) 僕らは僕らで、紙のマンガ雑誌や単行本の売上が落ちてくる一方で、ウェブ媒体やマンガアプリ、電子コミックスの勢いが増していくなかで「ベストな新人作品、新作発表の場とは何だろう?」と考えて、先行するcomicoさんやGANMA!さん、マンガBANG!さんなどにお話を聞きながら、どうしようかと考えていたんです。

僕らみたいな版元が関わるマンガアプリのよくあるパターンに倣って、どこかの開発・運営会社のほうから営業がかかってきて、そこに委託で卸す――ようは「おまかせ」「丸投げ」してロイヤリティーだけもらう――という選択肢もありました。

だけれども「自分たちの媒体」としてイニシアチブを持たないと「『北斗の拳』を使えれば儲かりそう」と考える会社に委ねるだけでは、未来がないなと。『北斗』や『エンジェル・ハート』はもちろん大事な作品ですが、旧作で稼いでいくことよりも、新作や新人を育てたいという気持ちが強くありましたから。

――LINEマンガなどでいくら既刊を売っても、次の弾になる新連載をどう育てていくかは別問題として残りますし、電子ストア/プラットフォームは各社の作品を横並びで売っているだけで「コアミックスのマンガのファン」みたいな個別のレーベル・版元のコミュニティを育てたり、作品・作家の濃いファンにするしくみはないですからね。別立てで用意しなくてはいけない。

花田 ええ。でも自分たちではアプリをどう作ればいいかはわからなかったところに、偶然、宇野さんと知り合った。

宇野 会ったその日で、ほぼ決まりましたよね。

花田 そうですね。コストも儲けも折半で、あとはお互いの持ち場を活かそうと。

(C)NSP,Inc. (C)ImagineerCo.,Ltd.
(C)NSP,Inc. (C)ImagineerCo.,Ltd.

■マンガアプリを軸に、LINEスタンプなどへの展開をあらかじめ組み込む

宇野 おもしろいマンガを作るところはコアミックスさんで、開発・運営やネットのプロモーション、LINEスタンプをはじめとするデジタルコンテンツづくりもイマジニアで、と。

弊社はハローキティにしてもリラックマにしても、長年、他社様のIPをお預かりしてどう売るかのノウハウを蓄積してきましたので、「マンガほっと」発で人気のあるキャラクターが育ってくれれば、僕らの主戦場で勝負できるはずだ、と。

花田 僕らはマンガ作品をアプリで完結させたいわけではない。紙や電子のコミックスはもちろん、LINEスタンプなり各種グッズなり、ファンが喜ぶものをいろいろ揃えていきたいし、作家にも「うちはそういうことができる会社です」ということを示したい。だけど、スタンプにしても、ひとつひとつの作品を自前でやるとなると手間もかかるしコストもかかって、なかなか手が出せない。そこをイマジニアさんにリラックマなどで培ったノウハウを活かしてもらえるとありがたいわけです。

宇野 弊社はLINEさんともお付き合いが深く、スタンプや着せかえもかなりの数を提供させていただいてきました。ですから、コアミックスさんの作品のよさを活かしつつ、LINEユーザーに合わせてどう作って売っていくかのお手伝いができればなと。スタンプを入り口に「このキャラクター、なんだろう?」と思って「マンガほっと」に来てもらえることも意図しています。

――コンスタントにLINEスタンプにする、コミックス以外のデジタルコンテンツを制作して展開することがあらかじめ組み込まれているマンガアプリ事業は、他社でもあまりないかもしれないですね。

花田 昔の「紙の雑誌とコミックス」だけの時代から、どんどん変わっていく環境に合わせて、スタンプやアプリという新しい入り口から多くの人に作品に入ってきてもらえたらと思っています。

弊社の『ちるらん』のLINE着せかえ制作などをお願いしてみてすぐわかったのは、イマジニアさんは作り慣れていらっしゃるので、勘所がわかっている。こちらの監修の手間が驚くほど少ない。できて当たり前だろうと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、別の会社さんと「ここ、直してください」と何往復もした過去も、ないわけではないんです。でもそうなると作家も編集者も本業に支障が出ちゃいますから。

『ちるらん』のLINE着せかえ。(C)橋本エイジ・梅本真也/NSP2010
『ちるらん』のLINE着せかえ。(C)橋本エイジ・梅本真也/NSP2010

■知られざるマンガアプリ開発・運営の規模感

――ちなみに、何人くらいの体制で開発・運営しているのでしょうか。

宇野 メインの開発は弊社とずっといっしょにやっている広島の開発会社、ドリームオンラインさんで、社内の開発メンバーがサーバのフォローなどで数人、常駐ではないデバックで10人くらい。あとはアプリのデザインやデジタルコンテンツ制作が6~7人、コアミックスさんとの折衝の中心は僕ともうひとり、ほかに登録実務がひとり、プロモーション専属部隊が4~5人と、計30人くらいです。うちの会社はアルバイトさん含めて100人ほどしかいませんので、けっこうな割合で関わっています。

アプリのリリース前には配信作品の全ページがちゃんと読めるかをスタッフ総出でチェックしました。

――じゃあ、イマジニアさんの方はみなさん、相当、中身もちゃんと読まれているわけですね。スタッフオススメの作品があれば教えてください。

宇野 デバック部隊では新撰組を描いた『ちるらん』にハマっている人たちが多いですね。あとはクルマ好きが「え! 『メカドック』があるの!」って『よろしくメカドック』を懐かしそうに読んでいたり。僕が好きなのは『ひとり暮らしのOLを描きました』ですね。OLちゃんをやさしく見守るように読んでいます。あの作品は弊社だとおじさん層も女性層も、みんな好きですね。

イマジニアのオフィスは『シティーハンター』でおなじみ新宿中央公園のほど近くにある
イマジニアのオフィスは『シティーハンター』でおなじみ新宿中央公園のほど近くにある

花田 打ち合わせのたびに新作も過去の作品も「あの作品がよかった」「あれ、おもしろいですね」とかって感想をいただけるのも刺激になっていますね。僕らとしてはコミックスの売上やTwitterに書かれる感想は見られても、ナマの声を直接聞ける機会は本当に少ないですからね。

――コアミックスさん側のスタッフは何人くらいですか。

花田 アプリ専属が5人と、配信される作品を担当する編集部十数名、それから広報3名とライツが関わっています。先ほども言ったように、委託して「よろしく」スタイルにしなかったので、会社の7割くらいの人は何かと関係があります。

――紙と電子の部署が編集部も販売も連携が取れていないとか、編集者が紙の方が偉いと思っていてデジタルに非協力的だとか、編集部間で「このアプリになんでうちの作品載せなきゃいけないんだ」と対立しているとか、アプリは運営会社に丸投げで編集部に情報が入ってきていないし編集部側がさほど興味も持っていないとか、アプリに関わる編集部員が兼務だらけで十分に機能していない、みたいな版元の話もいまだに多少聞こえてきますが……。

花田 もうそんなことを言っている場合ではないので、うちは全社的に取り組んでいます。

宇野 弊社とコアミックスさんとの関係はただの受託ではありませんので、さまざまな提案をしながら、連携して作品やキャラクターを大きくしていければなと。

■リラックマのマンガ化はありえるのか?

――ちなみにコアミックスさんがリラックマのマンガを作る、みたいな可能性はあるんでしょうか……?

宇野 最初にその話は出ましたね(笑)。でも、リラックマはサンエックスさんのキャラクターで、うちはそれをお願いする立場にはないので……。

花田 やれたらおもしろいだろうな、と思いつつ、リラックマのようにキャラクターがすでに確立されたものを、マンガとしてどういうふうに料理したらベストなのか、なかなかわからないんですよね。

宇野 うちの『メダロット』のマンガはどうですか? 今年20周年で、コアなファンの方は今でもたくさんいるんです。実は僕は昔、『メダロット』のカードゲームのマンガに、主人公と対戦して負けるキャラクターとして出たこともあります(笑)。イベントでサインを書いたりもしていました。

花田 高橋名人みたいですね(笑)。『メダロット』のおもしろみがわかる担当か作家さんが弊社にいるかどうかでしょうね。こういうのは企画ありきで無理矢理やっても絶対ダメで、めちゃくちゃ好きな担当か作家がいて「やっていいの!?」っていう感じになるならやりたいです。ちょっと聞いてみますよ。

■「気持ちのいい読み心地」へのこだわり

――アプリ「マンガほっと」に関して、何か技術的なこだわりはありますか。

宇野 使ってくださる方は気にならない――そこを気にさせてはいけない――と思うのですが、「マンガを読む」ことをとにかく気持ちよくできるように、バナーひとつにしてもどうすれば軽くてかつ画像が汚くならずに済むかなどにはこだわっています。

花田 もしイマジニアさんじゃなくて、ただどこかの運営会社に許諾してロイヤリティをもらうだけの関係だったら、僕らは「サクサク読める」ことに今ほど価値をみいだしていなかったかもしれません。やる前は「マンガアプリなんて普通に画像ファイル入れておけば動くんじゃないの?」とか思っていたんだけれども、たとえば1ページあたりの容量を軽くしないと、読み込みにいちいちストレスがかかる。といって、圧縮しすぎても絵が荒れてしまう。そのクオリティと使いやすさのバランスは、当たり前のようですごく注意深くやらないといけないところで。

宇野 スマホの画面の大きさで、白黒でもカラーでもきれいに魅せるにはどうすればベストかを、ビューアだけのアプリを何種類も作って検証しました。『ワカコ酒』みたいに画面の中で白が多いものでもモアレが出ず、かつ、『義風堂々!!』のように描き込みが多いものでも文字が潰れない……みたいなことの両立をめざしています。

花田 あとは、僕らは「多くの人に読んでほしい」と思うあまり、雑誌のページを増やすようなノリで、機能を思いつきで追加したがるところがあるんですが(苦笑)、情報を積めすぎてアプリを重くしてしまっては意味がない。

――コアミックスさんとイマジニアさんは今のところ相思相愛に見えますが、ケンカやトラブルはないんですか?

花田 うーん……うちの契約書などの戻しが遅いときなどは怒られています。

宇野 (苦笑)。

マンガアプリなのに「横綱に応援メッセージを送ろう!」という前代未聞のキャンペーンが行われた理由について訊いた後編に続く】

参考:“変わるマンガビジネス”(「新文化」)




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