Radius: Off
Radius:
km Set radius for geolocation
Search

コンビニとドンキと百均で爆買い破産寸前「下層キャバ嬢」の理性 – 現代ビジネス

今月から週刊連載になった、鈴木涼美さんの好評連載「オンナの収支報告書」。今回は「安物買いの銭失い」を絵に描いたような下層キャバクラ嬢の、ギリギリの生活をレポートします。

(※バックナンバーはこちら  http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

最も身近で安易でスリルと幸福感を得られる行為

ミサトさんというのは7年ほど前に歌舞伎町のキャバクラで働いていた当時31歳のおねえさんで、特別美人というわけでもはなかったが、ものすごく痩せていて髪の毛がつやつやだったので、シルエットとしては結構いい女に見える、というタイプだった。

その店はバイトのボーイを除くと、店長、副店長2人、マネージャー2人がいたのだが、その中で抜群にセックスアピールのない、いわばおばさんのような見た目の、小太りさんが店長で、ミサキさんはその店長の女であるというのは私がそこそこ仲の良かったボーイから仕入れた多分確かな情報である。

なぜ彼女のことを急に思い出したかというと、先日、深夜に新大久保職安通りのドンキホーテに行ったら、かつてのミサトさんとそっくりな人を見つけたからです。

photo by iStock

ほろ酔いで1人でふらふら入って来たその人は、化粧品コーナーや部屋着やパジャマのコーナーを徘徊しながら、ぼかすかと商品を買い物かごに入れ、時々立ち止まったりしゃがんだりして商品と睨み合い、困ったような顔をして、結局その商品もカゴに入れる。ドンキのあのおなじみの買い物カゴがいっぱいになったところでふらふらとレジに向かって行った。

その人は、たまたま背格好やヘアメイクがミサトさんに似ていたのだが、行動自体は、深夜の量販店などではそれなりにある光景である。

酔って気が大きくなり、平気で声を荒げたり、普段気が弱いくせに喧嘩っ早くなったりする男たちを、私たちは冷笑的に見ている。路上に止まっている自転車をなぎ倒し、口汚く部下を罵る。普段の臆病っぷりが際立ち、本性を見せているのだ、と自らの評判を落とすだけでなく、人に迷惑もかけっぱなしである。

対して、女の子がお酒を飲んでする行動と言えば泣きながらの恋バナ、無駄なセックス、それと見境のない買い物くらいだ。普段なら良識や貞操観念などできく歯止めが効かなくなり、タガが外れたように泣いたり、うっかり好きでもない人とホテルに行ったりする。

買い物についても、通常であればそれなりに欲しいものであっても、買ったところで使わないかもしれない、でも欲しい、しかしこれを買ったら月末のやりくりが苦しい、でも可愛い、ただ似合わなそうである、と何度も考えを反芻して買うか買わないか決めるのだが、酔っているとその反芻作業が抜け落ちることが多い。

そもそも買い物というのは、拳で殴り合ったり賭博でヒヤヒヤしたりすることが相対的に少ない女の子にとって、最も身近で最も安易にスリルと幸福感を得られる行為であるのは間違いない。

買うか買わないか選択を迫られ、買った時の気持ちの高揚と引き換えにいくばくかの財産を削り取られる。ちょっとした罪悪感と後悔、いい女になるための道具を得られた喜び、先ほどまでは人のものだった商品が自分のものになるときめきなど複数の感情が入れ混ざる。

毎日のように新商品が発売され、ちょっと歩けばキラキラで素敵で可愛いものが溢れている東京のような街では、そんなドラマチックな状況が簡単に生まれる。

ミサトさんもまた、そうやって買い物によって自分の日常をドラマチックに補完したいと思う女の人であった。

ただ、基本的にそれほど稼ぎがいいわけでもなく、年齢も年齢で、質素な生活をしていた彼女は、普段はそれほど大それた買い物をすることがなく過ごし、仕事帰りの深夜、少し酔っている状態でのみ、その願望が急に垂れ流しになり、スリルと幸福感を反芻することすらなく手が伸びるという状態になっていたのである。




Related Post

コメントを残す

Loading…