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『もしドラ』の次はこの本! 次世代型書店「天狼院書店」店主が描く、マーケティング理論×ミステリーの融合作 – ダ・ヴィンチニュース

『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)

 あなたは、今話題の異色の書店・天狼院をご存じだろうか。店内にこたつを設え、ゆっくり本を楽しめる空間を提供しているのはもちろんのこと、部活動やゼミの運営によりコミュニティづくりまで行うこの書店は、「次世代の書店」として多くの人の注目を集めている。そんな書店を生み出した三浦崇典氏の初の小説『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)は、マーケティング×ミステリー×人間ドラマの画期的なストーリーだ。この本のベースとして描かれているのは、書店経営をする三浦氏を幾度となく救ったというマーケティング理論「7つのマーケティング・クリエーション」。かつて『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が大ヒットしたように、マーケティング理論とミステリーがかけ合わさった三浦氏のこの小説もヒットを飛ばすに違いない。

 主人公は、女子大生の桐生七海。彼女は、最強のマーケティング技巧を持つと言われる謎の人物・西城潤に弟子にしてほしいと頼み込む。「受注数世界一の、殺しの会社を創りたいんです」。無謀な野望を持つ彼女に、西城はマーケティング理論を伝授することになる。

 殺しは、「高価」であるばかりではなく、「違法」であるゆえに、「営業がかけられない、広告ができない、PRができない」という、「マーケティングの三重苦」を宿命的にかかえている。この「殺し」を自在に売ることができるのは、最強のマーケターだけといえるだろう。一体どんな戦略を立てればいいのか。西城に学んだ成果として、七海は表向きはイベント&警備会社、裏では殺人代行を請け負う会社「レイニー・アンブレラ」を経営することとなる。表舞台に出たくはないのに、女子大生起業家として注目を浴び始める七海。さらに、「レイニー・アンブレラ」が警備を担当するイベントにおいて、大勢の前でクライアントが狙撃されるという事件が発生してしまう。絶体絶命のピンチに頭を抱える七海に、「今が最大のチャンス」と言いきる西城。果たして西城の真意とは? 七海が受注数世界一の殺しの会社を創りたい真の目的とは何なのか。

 三浦氏のマーケティング理論「7つのマーケティング・クリエーション」が物語と見事にマッチしている。実際にマーケティング理論を生み出すヒントとなった、物語内にも登場する、吉祥寺の和菓子店「小ざさ」が興味深い。徹底したコンテンツ主義。商品は羊羹と最中の2つなのに、年商は1坪で3億円。坪当たりの売上高は、世界企業のティファニーやアップルストアをも凌駕する吉祥寺の「小ざさ」の例から、七海は学んでいく。読者も七海の後を追うように、生きたマーケティング理論を学ぶことができる。

 だが、この物語はマーケティング理論が学べるだけにとどまらない。この物語はミステリーとして、人間ドラマとして面白い。理知的で強い意志を持つ美しい女子大生・七海。彼女にマーケティングを教えるクールなようでいてどこか温かい謎の男・西城潤。「女子大生起業家」として活躍する七海に憧れを抱き、取材を試みる、WEBメディア「コードブレイカー」編集長・秋山明良。秋山の大学時代からの友人で、とにかく強気なフリーアナウンサー兼ジャーナリスト・相川響妃…。個性的な登場人物たちがそれぞれの葛藤を抱えながら前へ前へと進んでいく。すべての裏にあるのは、とある村に隠された重大な秘密。いつしか物語は、政府まで巻き込む壮大な内容へと変化していく。度々起こる事件と、ほのかに香るきな臭さ。点と点が見事につながっていくさまには思わず惹きこまれる。そして、クライマックスでは、人と人との絆に、何だかほろりと泣きそうになる。

 こんな画期的なミステリーを、読まない手はないだろう。マーケティングを学びたい人も、ミステリーが好きな人も、人間ドラマ好きも、すべての人が高揚させられる物語は、これから益々大きな話題を呼ぶに違いない。

文=アサトーミナミ




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